「私の生活習慣が悪かったのかな」

糖尿病と診断されて、そう思っていませんか。

診断を受けると、多くの方がショックを受けます。疑問や不安もたくさん出てくると思います。

診断直後に湧く4つの疑問。なぜ自分が糖尿病に、どんな病気なのか、なぜ症状がないのに治療するのか、これから何に気をつければいいのか

でも外来の診察は時間が短く、すべてに答えるのは難しいのが実情です。

そこでこの記事では、診断されたばかりの方に知ってほしいことを、3つに絞ってお伝えします。

  1. 糖尿病とは、どんな病気なのか
  2. なぜ治療が必要なのか
  3. 生活の中で何に気をつければいいのか

糖尿病とはどんな病気か

糖尿病は、血糖値が上がりやすい体質になる病気です。

「尿が甘くなる病気」と思われがちですが、それは本質ではありません。尿に糖が出るのは、血糖値が上がった結果です。

糖尿病の本当の問題は尿が甘くなることではなく血糖値が上がること。原因はインスリンが効きにくい、または出にくい体質であることを示す図

血糖値が上がる原因は、インスリンというホルモンにあります。インスリンは血糖値を下げる働きをしています。糖尿病では、このインスリンが次のどちらか、または両方の状態になっています。

  • 効きにくい:インスリンは出ているのに、体が反応しにくい
  • 出にくい:インスリンを出す力が弱っている

糖尿病は治るのか

糖尿病は、一度診断されたら治りません。体質の病気だからです。

「生活習慣病」という呼び名から、生活を正せば治ると思う方もいます。しかし、治療を続けて血糖値が良くなっても、体質そのものが消えるわけではありません。

そのため、診断されたら、定期的な通院を一生続ける必要があります。

「これで糖尿病が治った」とうたう民間療法もありますが、信じないでください。不安な気持ちにつけ込むものです。

症状がないのに、なぜ治療が必要なのか

放っておくと、症状がないまま体の臓器が傷んでいくからです。

診断された時点では、ほとんどの方が元気です。血糖値が高くても、痛みや気分の悪さはほぼありません。出るとしても、喉が渇く、トイレが近くなる程度です。

ただ、血糖値の高い状態が何年も続くと、体のあちこちの臓器にダメージがたまっていきます。こうして起こる病気を合併症といいます。

三大合併症

糖尿病の代表的な合併症は、神経・目・腎臓の3つです。

糖尿病の三大合併症。神経(糖尿病神経障害)は足の切断、目(糖尿病網膜症)は失明、腎臓(糖尿病腎症)は人工透析につながりうることを示す図

脳梗塞・心筋梗塞

血糖値が高いと、動脈硬化も進みやすくなります。その結果、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がります。どちらもある日突然起こり、命に関わる病気です。

糖尿病で動脈硬化が進むと、脳梗塞や心筋梗塞のように太い血管が詰まる病気のリスクが上がり、どちらもある日突然起こることを示す図

進んだ合併症は元に戻らない

「合併症が出てから治せばいい」とはいきません。一度進んだ合併症は、血糖値が良くなっても元に戻らないからです。

すでに進んだ合併症のダメージは元に戻らないが、これからの進行は遅らせることができる。治療の目的は今以上に合併症を進ませないことだと示す図

一方で、これからの進行は遅らせることができます。つまり治療の目的は、今以上に合併症を進ませないことです。

診断のされ方で、スタートラインは違う

同じ「初めての診断」でも、状況は人によって違います。

診断のされ方 合併症の状態
毎年の健診で、今回初めて見つかった この1年ほどで発症したと考えられ、合併症はまだほとんど無いことが多い
しばらく健診や受診をしておらず、久しぶりに見つかった いつから血糖値が高かったか分からず、すでに合併症が進んでいることがある

どちらの場合も、今がこれからの人生でいちばん合併症が進んでいない時期です。治療を始めるのは、今日がいちばん早い日です。

生活の中で何に気をつければいいのか

糖尿病治療の柱は、食事・運動・薬の3つです。

糖尿病治療の3本柱。食事は3食に分けて炭水化物の量を意識する、運動は有酸素運動と筋トレを組み合わせる、薬は食事と運動だけでは届かない分を調整する

食事のポイント

いちばん大事なのは食事です。まずは次の3つを意識してください。

  1. 3食に分けて食べ、主食の量を決める
  2. 間食をしない
  3. 甘い飲み物を飲まない

1 3食に分けて、主食の量を決める

血糖値を上げるのは、甘いものだけではありません。いちばん影響が大きいのは、ごはん・パン・麺類などの主食です。

主食は3食に分けて、1食の量を決めましょう。目安は、ふつうの大きさのお茶碗に1杯です。大盛りやおかわりは控えます。

ただし、主食を極端に減らす必要はありません。糖尿病の方にも、一定量の炭水化物は必要です。

2・3 間食と甘い飲み物を控える

糖尿病では、血糖値が上がりやすいだけでなく、下がるのにも時間がかかります。

食後の血糖値の動きのイメージ。糖尿病のある人は糖尿病のない人より高く上がり、なかなか下がらないことを示すグラフ

食事と食事の間に何か食べると、下がりかけた血糖値がまた上がります。血糖値が下がる時間がなくなってしまうのです。

糖尿病のある人の1日の血糖値のイメージ。間食をすると血糖値が下がりきらないまま次の食事を迎えることを、間食ありと間食なしで比べたグラフ

飲み物は、水・お茶・ブラックコーヒーにしましょう。これらは血糖値を上げません。

食事のときは、よく噛んでゆっくり食べるとさらに良いです。

「血糖値が下がる食品」に注意

「食べると血糖値が下がる」とうたう食品は、信じないでください。何かを食べ足して血糖値が下がることはありません。そんな食品があれば、すでに薬になっています。

運動のポイント

運動は、有酸素運動と筋トレを組み合わせるのが理想です。

目的が違う2種類の運動。ウォーキングやランニングなどの有酸素運動は脂肪を落とし、筋トレなどのレジスタンス運動は筋肉を増やす。両方を組み合わせると血糖値を下げやすい体質に近づく

脂肪が少なく筋肉が多い体は、血糖値が下がりやすくなります。

ただし、運動したからといって、たくさん食べてよいわけではありません。運動で使えるエネルギーは、思っているより少ないからです。

まずは軽いウォーキングなど、続けられる運動から始めましょう。

薬の役割

薬は、食事と運動だけでは下がりきらない血糖値を補うものです。

糖尿病は体質の病気です。食事と運動をきちんとしていても、血糖値が上がってしまう方はたくさんいます。薬が必要になるのは、努力が足りないからではありません。

一方で、薬だけに頼るのも良くありません。食事と運動を見直さないまま薬を増やしても、いずれ限界がきます。

薬の調整は主治医がします。食事と運動を変えられるのは、あなた自身です。治療の主役は、あなたです。

自分を責める必要はありません

最後に、いちばんお伝えしたいことです。

糖尿病と診断された方の多くが、「自分のせいだ」と感じています。

糖尿病は遺伝や体質による個人差がとても大きい病気で、健康的な生活をしていても発症する人がいる。自分を責める必要はまったくないことを伝える図

たしかに、生活習慣は糖尿病に関係します。でもそれ以上に、遺伝や体質の影響が大きい病気です。家族に糖尿病の方がいるなど、なりやすい体質があれば、健康的な生活をしていても発症することがあります。

だから、過去の生活を悔やむ必要はありません。

糖尿病は症状が出にくい病気です。裏を返せば、合併症を進ませなければ、これまでどおり元気に過ごせます。それが治療のゴールです。

大切なのは、これからどうするかです。主治医と一緒に、できることから始めていきましょう。