「私の生活習慣が悪かったのかな」
糖尿病と診断されて、そう思っていませんか。
診断を受けると、多くの方がショックを受けます。疑問や不安もたくさん出てくると思います。

でも外来の診察は時間が短く、すべてに答えるのは難しいのが実情です。
そこでこの記事では、診断されたばかりの方に知ってほしいことを、3つに絞ってお伝えします。
- 糖尿病とは、どんな病気なのか
- なぜ治療が必要なのか
- 生活の中で何に気をつければいいのか
糖尿病とはどんな病気か
糖尿病は、血糖値が上がりやすい体質になる病気です。
「尿が甘くなる病気」と思われがちですが、それは本質ではありません。尿に糖が出るのは、血糖値が上がった結果です。

血糖値が上がる原因は、インスリンというホルモンにあります。インスリンは血糖値を下げる働きをしています。糖尿病では、このインスリンが次のどちらか、または両方の状態になっています。
- 効きにくい:インスリンは出ているのに、体が反応しにくい
- 出にくい:インスリンを出す力が弱っている
糖尿病は治るのか
糖尿病は、一度診断されたら治りません。体質の病気だからです。
「生活習慣病」という呼び名から、生活を正せば治ると思う方もいます。しかし、治療を続けて血糖値が良くなっても、体質そのものが消えるわけではありません。
そのため、診断されたら、定期的な通院を一生続ける必要があります。
「これで糖尿病が治った」とうたう民間療法もありますが、信じないでください。不安な気持ちにつけ込むものです。
症状がないのに、なぜ治療が必要なのか
放っておくと、症状がないまま体の臓器が傷んでいくからです。
診断された時点では、ほとんどの方が元気です。血糖値が高くても、痛みや気分の悪さはほぼありません。出るとしても、喉が渇く、トイレが近くなる程度です。
ただ、血糖値の高い状態が何年も続くと、体のあちこちの臓器にダメージがたまっていきます。こうして起こる病気を合併症といいます。
三大合併症
糖尿病の代表的な合併症は、神経・目・腎臓の3つです。

脳梗塞・心筋梗塞
血糖値が高いと、動脈硬化も進みやすくなります。その結果、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上がります。どちらもある日突然起こり、命に関わる病気です。

進んだ合併症は元に戻らない
「合併症が出てから治せばいい」とはいきません。一度進んだ合併症は、血糖値が良くなっても元に戻らないからです。

一方で、これからの進行は遅らせることができます。つまり治療の目的は、今以上に合併症を進ませないことです。
診断のされ方で、スタートラインは違う
同じ「初めての診断」でも、状況は人によって違います。
| 診断のされ方 | 合併症の状態 |
|---|---|
| 毎年の健診で、今回初めて見つかった | この1年ほどで発症したと考えられ、合併症はまだほとんど無いことが多い |
| しばらく健診や受診をしておらず、久しぶりに見つかった | いつから血糖値が高かったか分からず、すでに合併症が進んでいることがある |
どちらの場合も、今がこれからの人生でいちばん合併症が進んでいない時期です。治療を始めるのは、今日がいちばん早い日です。
生活の中で何に気をつければいいのか
糖尿病治療の柱は、食事・運動・薬の3つです。

食事のポイント
いちばん大事なのは食事です。まずは次の3つを意識してください。
- 3食に分けて食べ、主食の量を決める
- 間食をしない
- 甘い飲み物を飲まない
1 3食に分けて、主食の量を決める
血糖値を上げるのは、甘いものだけではありません。いちばん影響が大きいのは、ごはん・パン・麺類などの主食です。
主食は3食に分けて、1食の量を決めましょう。目安は、ふつうの大きさのお茶碗に1杯です。大盛りやおかわりは控えます。
ただし、主食を極端に減らす必要はありません。糖尿病の方にも、一定量の炭水化物は必要です。
2・3 間食と甘い飲み物を控える
糖尿病では、血糖値が上がりやすいだけでなく、下がるのにも時間がかかります。

食事と食事の間に何か食べると、下がりかけた血糖値がまた上がります。血糖値が下がる時間がなくなってしまうのです。

飲み物は、水・お茶・ブラックコーヒーにしましょう。これらは血糖値を上げません。
食事のときは、よく噛んでゆっくり食べるとさらに良いです。
「血糖値が下がる食品」に注意
「食べると血糖値が下がる」とうたう食品は、信じないでください。何かを食べ足して血糖値が下がることはありません。そんな食品があれば、すでに薬になっています。
運動のポイント
運動は、有酸素運動と筋トレを組み合わせるのが理想です。

脂肪が少なく筋肉が多い体は、血糖値が下がりやすくなります。
ただし、運動したからといって、たくさん食べてよいわけではありません。運動で使えるエネルギーは、思っているより少ないからです。
まずは軽いウォーキングなど、続けられる運動から始めましょう。
薬の役割
薬は、食事と運動だけでは下がりきらない血糖値を補うものです。
糖尿病は体質の病気です。食事と運動をきちんとしていても、血糖値が上がってしまう方はたくさんいます。薬が必要になるのは、努力が足りないからではありません。
一方で、薬だけに頼るのも良くありません。食事と運動を見直さないまま薬を増やしても、いずれ限界がきます。
薬の調整は主治医がします。食事と運動を変えられるのは、あなた自身です。治療の主役は、あなたです。
自分を責める必要はありません
最後に、いちばんお伝えしたいことです。
糖尿病と診断された方の多くが、「自分のせいだ」と感じています。

たしかに、生活習慣は糖尿病に関係します。でもそれ以上に、遺伝や体質の影響が大きい病気です。家族に糖尿病の方がいるなど、なりやすい体質があれば、健康的な生活をしていても発症することがあります。
だから、過去の生活を悔やむ必要はありません。
糖尿病は症状が出にくい病気です。裏を返せば、合併症を進ませなければ、これまでどおり元気に過ごせます。それが治療のゴールです。
大切なのは、これからどうするかです。主治医と一緒に、できることから始めていきましょう。
